火災保険(家財保険)の内容説明です。
契約時に「火災保険って大家さんが建物でかけてるんじゃないの?」と質問を頂くことがあります。
大家さんが入っていれば自分はかけなくてもいいのでは?ということですね。
たしかに、一見そう思われてしまうかもしれませんが、どこの物件でも部屋毎に入居者さんが加入しなければならない理由があります。
紛らわしい原因は、不動産屋が「火災保険」という言い方でお伝えすることが多いからのような気がします。賃貸で入居者さんに加入頂くものは厳密にいうと家財保険です。(そういいながら私もお伝えするときは火災保険とお伝えしています。伝わりやすいので。)
それではまずは通常の火災保険がどういうものかというとお話から。
大家さんはもちろん建物に火災保険をかけています。アパートを建築する際、金融機関で事業用ローン(専用ローン含む)を組むのが一般的です。ローンを組む場合、融資の条件で火災保険に加入するのは必須となります。(例えばアパート建築の場合、木造で耐用年数木造22年、ざっくり20年くらいのローンを組んだとすれば、その途中で建物が火災で滅失されてしまっては融資額の回収が予定通り進まない他、多くのリスクが生じる為)
大家さん側からみると、建物が消失した場合、建て替えが必要が生じます。もし、建物が無くなったからと言っても、既存のローンが無くなるわけではありません。つまり、再建築をしようとする場合には既存のローン+建築費用がかかることになります。
そうならないようにあらかじめかけておくのが、火災保険です。もしもの時に新しい建物を建てられるだけの保険に入っていれば、消失したとしても支払いは既存のローンの分だけでなので、原状まで復帰させることが容易になります。一部が毀損した場合も上限が建物を再建築できるだけあるので問題なく対応できます。
さて、それでは「なおさらいらないのでは?」と思われるかもしれませんが、ここで問題になってくるのが、「失火法(失火責任法)」です。
失火法のおおまかな内容は要約すると、『民法709条(不法行為による損害賠償)の規定は、失火の場合には適用しない。失火者に重大な過失があったときは例外。』となります。
要するに、重過失が無く起こった火事は、火元に損害賠償請求ができません。ということです。
逆に、もし火元が自分だったとしても、建て替え費用を請求されるということもありません。(寝たばこ等、ちゃんと注意していれば防げたものは重過失にあたる可能性が高いのでそれ以外の場合です。)
大家さんとしては火災保険に入っていますので、建物の建て替えは、火元に請求できなくても問題ないように対応済みです。
それでは、入居者さんはどうでしょうか?
隣の部屋の火事で家の中の家財などなどすべて燃えてしまった・・ →金出せ。→(失火者)出す必要ありません。→ どうしよう・・。となってしまいます。
そうならない為に加入必須なのが、賃貸の場合の火災保険(家財保険)です。
火災保険という言い方を良くしますが、厳密には家財に対しての保険です。
なかには室内には大したもの持ってないから大丈夫。という方もいらっしゃるでしょう。シングル物件の大抵の方はそうかと思います。
ただ、その場合でもやっぱり必要な理由が、入居者さんには退去時に原状回復義務があるという点です。
あくまでも不法行為による損害賠償請求ができないという規定なので、債務不履行による損害賠償まで妨げるものではありません。原状回復できないようなら損害賠償請求はされることになります。隣からの貰い火で焼けた部分があるとすれば直して返さないといけませんのでそのリスクへの保険です。
家財保険の一般的な中身は、
家財保険 ・・ 自分の持ち物に対しての保険
先で記載した家財に対してかける保険です。加入する保険によって内容の確認は必要ですが、火災や水漏れ等家財に被害が出た場合におりる保険です。対象範囲はいろいろなのでパンフレットを確認してみて下さい。
借家人賠償責任保険(特約) ・・ きれいにして返す為の保険
火災保険の加入が必須条件である理由はむしろこちらです。これは賃貸の保険の場合、家財保険の特約として確実についている保険です。これがない保険では無意味です。読んで字の如くですが、借りている人の賠償責任に対する保険です。要するに先ほどの原状回復が必要な場合の補修費を確実にする為の保険です。(家財保険の適用範囲での特約なので、普通の退去時の原状回復にはつかえません。)
個人賠償責任保険 ・・ 結局ついてくる保険
日常生活で起こる個人への賠償責任に対しての保険です。指定の家財保険のプランに付随してきてしまうことが多いです。意外と入っていること自体、覚えていない人の方が多いような気もする保険です。
ということで、火災保険の内容説明としてはこのような感じです。
もう一つ、火災保険によくあるご質問で、「自分でもっと安い保険で済ませたい。」というのがあります。
多くの場合、賃貸で加入する火災保険は、家主(管理会社)より指定されます。別のものに入りたいという交渉は難しいことが多いので、初期費用のひとつとご納得頂く方が良いかと思います。(法人契約で包括保険に加入の場合は例外でだいたい通ります。ドラフトチェックの一部です。)
良くある金額は15000円~20000円/2年の保険です。指定がない場合で、安いものを探すと8000円~10000円/2年あたりから探せるかと思います。
主だったものでは家財補償/借家人賠償責任/個人賠償責任/の上限金額によって金額がかわります。
どうしても変えたいという場合は、ご相談・交渉はできますので一度ご相談下さい。借家人賠償責任の補償額が2000万あれば代替の内容としては問題ないかと思います。(保険の代理店も兼業している不動産業者は多いので変更が難しい可能性はやはり結構高いのですが。)
補足ですが、賃貸の保険の場合、地震保険(家財保険に特約付与)は選べるケースとそうでないケースがあります。付けられる場合でも付ける方は少ないかとは思います。
以上、賃貸の場合の火災保険のご説明でした。